個人事業主として開業して間もない方から、「30万円未満の固定資産は全額経費計上できるのですよね」という質問をよく受けます。
確かに、青色申告書を提出する個人事業主については、取得価額が30万円未満の固定資産を一括で減価償却(即時費用処理)できる特例が設けられています。
そのため、わざわざ固定資産に計上して毎期、減価償却の計算をするよりも、取得年度で全額費用処理をする方が税金も安くなり楽で良いと思われていますが、果たしてそうでしょうか?
開業してしばらくは、売上も思ったほどはあがらず、経費も予想以上にかかるケースが多いです。
そのような状況であれば、税金もそれほどかかってこないと思います。
個人事業主にかかる主たる税金は所得税です。
所得税は所得の金額に応じて税率が変わる累進課税を採用しています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
こちらの表は令和3年度現在の所得税率表になりますが、課税される所得金額が大きくなるにつれて税率がどんどんあがっていき、所得の金額が4千万円以上になりますと45%にもなります。
開業して間もない時期は、売上も伸びず、経費負担が多くなり、一番低い税率の5%であったとしても、しばらくして、売上も右肩上がりで増加し、経費の負担も少なくなれば、当然、税率もどんどん高くなってきます。
そうなってくると、少額減価償却資産として一括で経費処理をすると、低い税率のときに経費をすべて使うことになってしまいます。
こういった時には、あえて少額減価償却資産の特例を使わず、固定資産として処理することで、より高い税率のときに費用化でき、取得した事業年度以降の節税効果を高める可能性があります。
当事務所では、短期的に税金を抑えることはもちろん、長期的な観点からも税金を抑えるようなサポートをさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。